孤島パズル

★あらすじ

英都大学推理研の江神部長とアリスが活躍するシリーズ第二弾(一作目は「月光ゲーム―Yの悲劇'88」)。
推理研に初の女性部員が入部した。アリスの同級生のマリアだ。そのマリアの誘いで江神部長とアリスは、南海の孤島で夏休みを過ごすこととなった。そこにはマリアの亡き祖父が建てた別荘があり、親戚(マリアの伯父・伯母や従兄弟たち)や親しい知人たちが夏の間、集う。島にはもう一軒、別荘が建っていて、画家の平川が同じく夏を過ごしにやってくる。そして今回、マリアも三年ぶりにここを訪れたのだ。

マリアが推理研の二人を誘ったのは訳がある。実は祖父が“宝物”を島のどこかに隠し、そのヒントとしてモアイを模したポールが島中のあちこちに何十本も建てられているのだ。親戚連中がもちろん、その謎に挑戦したが未だ解かれていない。そう。その謎に挑戦してもらうべく、招待したと言うことだ。どうやらそのモアイ像、それぞれにあらぬ方向を向いていて、その顔の向きがヒントらしいのだが。。。

そんな謎に挑むべく、勇んで島に乗り込んできた三人だった。だが、宝探しに興じている暇はなかった。台風が近づいてきて、夜半には風雨が強まりだした。そして、やってきたのは嵐だけではなかった。その嵐の夜に事件は起きてしまった。
“現場”は別荘の二階。その部屋は中から施錠されていた。そして、窓も同様だった。そう、事件が起きた時、そこは密室だったのだ。それ自体が密室でもある南海の孤島。その別荘で起きた密室殺人事件だ。推理研のメンバーは宝探しどころか、本物の殺人事件に立ち向かうこととなってしまったのだ。
犯人はもちろん、別荘に遊びに来ていた親戚・知人の中にいる。島の外から人がやってくることは船やヘリコプターでもなければ無理だ。そして、犯行のあった夜は嵐だった。それらの交通手段は当然、使えない。そう、二重の密室の中での犯行。犯人はこの中にいる。だが、犯人が誰かはもちろん、その犯行動機も分からないのだ。推理研の三人の推理が始まった。

★基本データ&目次

作者 有栖川有栖
発行元 東京創元社(創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
発行年 1996
ISBN 9784488414023
  • 序章 パズラー
  • 第一章 ジグソー・ピース
  • 第二章 密室パズル
  • 第三章 自転車パズル
  • 第四章 モアイパズル
  • 第五章 自殺パズル
  • 読者への挑戦
  • 第六章 ジグソーパズル
  • エピローグ
  • あとがき

★ 感想

諸々、ネタバレありです。

前作の「月光ゲーム―Yの悲劇'88」の雰囲気が気に入り、二作目を読んでみました。
結末に至る前に「読者への挑戦」なんて章を設けているあたりがなんとも古風。でも、それは作者の推理小説というものへの愛情・傾倒・のめり込みに他ならず、読み手も思わずクスリとしてしまう。つまりは「やはり推理小説はこうでなくちゃ!」と思わせてくれるのだ。
そんな作者が用意してくれた事件の舞台は“絶海の孤島”。前作でも自然現象(火山の噴火)によって、期せずして出現した“密室”が舞台でしたが、今回はストレートに、主人公自らが“密室”に入り込んでいくスタイル。でも、それだけではと言うことで、事件が起きた現場(別荘の一室)自体も施錠されていた“密室”という念の入れよう。やっぱり探偵は「密室の謎」に挑んでもらわないと!という期待に応えてくれている。そこまで推理小説好き、と言う訳ではない私でも、これだけでワクワクさせられた。
しかも、密室が密室となった理由が悪くない。他の小説では、犯人がやたらと小細工をして密室を作り出すものがあるが、普通の人が(推理小説マニアじゃない人が、の意)そこまで考えるか?!と、白けてしまう。でも、本作は納得感があるのだ。今回は被害者自らが密室作りに“加担”したパターンだが、思い浮かぶ情景に不自然さはない。これは重要なこと。

探偵と助手、という組み合わせは、シャーロック・ホームズとワトソンのコンビを出すまでもなく、今や定番スタイル。でも、それ故にしっくりくる。推理研の江神部長がホームズで、主人公兼語り手のアリスがワトソンという役回り。と言っても、江神部長はそれほど偏屈な人物ではなく、クールなイメージ。そしてアリスも若々しさ満載で、ちょっと青春小説っぽいところもあり、本格的ミステリー小説ではあるものの、気軽に読める感じだ。大時代的な仰々しさを持った作品も悪くはないが、エンターテインメント作品としては本作くらいが丁度いい。読み易さと本格さのバランスがいい、と言うことだ。

それから、作者自身による「あとがき」も面白い。本作を描くにあたっての作者の状況やら(前作の出版が決まってすぐに「二作目を」と依頼があったそうだ)、想いやらが語られていて、作者とともに“客観的”にこの作品を改めて愛でることができるのだ。

そんな「二作目」の本書だが、前作を読んでいなくても問題はないだろう。独立して読める。背景・人物設定もさらりとだが説明があり、「これ、誰?」ということにはならない。この作品から読んでも大丈夫です。

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・ 紙版

● Audio Book





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