数学文章作法 推敲編

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★あらすじ

数学文章作法 基礎編」に続く二冊目。
「推敲」とは、文章を練ること。「執筆」が文章を書くこと、「校正」は文章の誤字・脱字・レイアウトなどを直すこと、「校閲」は文章の誤りや不備な点(事実関係の誤りなど)を指摘すること。本書では「推敲」について書いているが、「執筆」、「校正」、「校閲」も一部含まれている。

読者は迷う。書かれている文章だけを頼りに、読者は意味を理解しようとする。それに対して著者は、背景やら文章の全体像などを理解している。そのため、著者にとっては「分かりにくくない」文章も、読者にとっては分かりにくいものとなってしまうことがある。
読者は積み木を重ねるように、文章を読みつつ、概念を構築していく。著者は、読者が迷わず積み木を重ねていけるように、自身の文章を修正していく必要がある。似ている語句を使ったり、やたらと長い文だったり、言葉が不足していたり、逆に無駄な言葉が多かったりすると読者は迷ってしまう。
「推敲」をするとき、著者は著者であることを忘れ、読者の立場に立って文章を読んでみることが大事。「著者の帽子を捨て、読者の帽子をかぶる」のだ。筆記具を持ち、文章を読み返していき、読みにくいと感じる箇所には「読みにくい」と、語句の使い方が気になる場所にはアンダーラインを引いていく。そのようにして印を付けていこう。こうして一通り終えたら、そもそも自分が「書きたかったこと」と、「現在の文章」のズレをよく考えてみよう。その際、「完成イメージ」を持って臨むのがいい。

自分で書いた文章を直すのは気が引けるものだ。だが、無駄な言葉は削る、足りない部分は加筆する。これを繰り返すことによって文章はよくなり、読者の迷いも減っていく。

★基本データ&目次

作者結城浩
発行元筑摩書房
発行年2014
  • はじめに
  • 第1章 読者の迷い
  • 第2章 推敲の基本
  • 第3章 語句
  • 第4章 文の推敲
  • 第5章 文章全体のバランス
  • 第6章 レビュー
  • 第7章 推敲のコツ
  • 第8章 推敲を終えるとき
  • 第9章 推敲のチェックリスト

★ 感想

著者は数式を多く用いた文章を書くことが多いとのこと。プログラミング入門書や暗号技術などの著書が多数ある。「数学ガール」シリーズは有名(未だ読んだことがないのですが・・・)。

映画「アマデウス」の中でこんなシーンがあった。サリエリが、モーツァルトの書いた楽譜を見て、書き直した跡が全くないことに愕然とする、というもの。天才モーツァルトは、神から受けた啓示を書き記すがごとくに、最初から完璧な楽譜を書いたというわけだ。
文章を書く場合も、そんな転載は別にして、私も含めて普通の人は推敲をしないとろくな文章は書けない。この短いレビュー文だって、サラッと書いたすぐ後だと、漢字の変換ミスだったり、言葉遣いがおかしかったりする箇所がちょこちょこ見つかる。

とは言え、改まって「推敲をちゃんとしましょう」と言われても、もう一度、読み直しをしてみるくらいしかやらず、それ以上は何をしていいか分からないという感じだろう。本書は、そんな“日々の文章作成”(学校のレポートだったり、会社の資料作りだったり)から、さらには本格的な執筆活動(論文発表、書籍著述などなど)に至るまで使えそうな「推敲」のテクニックを分かり易く解説してくれている。
前著「数学文章作法 基礎編」が文章を書いている時の話だったのに対し、今回は一旦書き終わった後の話。この辺りも、順を追って説明するという、著者らしい構成だと思う。さらに、各章ごとにまとめ(振り返り)があり、理解度を高めてくれる。本書を読み終わったあとは、このまとめ部分だけ書きだしておけば、実際の推敲の際に手元に置いて使えるという優れもの。

それにしても、「読者の帽子をかぶって(読者の気持ちになって)」自分の書いた文章を客観的に見直すって、やっぱり難しいですよね。推敲って、テクニックもさることながら、この“心構え”がもっとも大事なんだなと、本書を読んで再認識。難しいなりにも努力せねば。

前作と合わせて読むことをおすすめします。

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