★あらすじ
著者はインド料理用食器の輸入業者。故に、日本国内のインド料理屋事情にも詳しいし、買い付けのために訪れるインドや周辺の国々の様子もよく知っている。
日本のインド料理屋のカレーには、ふっくらしてモチモチの大きなナンが定番になっている。しかし、インドでは小さくカットされているのが普通。またそれほどふっくらしてもいない。大きなフカフカのナンは日本のインド料理やで発展、普及したものだ。そもそもナンはインド発祥のものではなく、イランあたりから伝播してきたものだ。そのため、中央アジア各地で様々なナンが作られている。
ビリヤニも外来の料理だ。ペルシアからトルコに伝わったプラオがその素と言われている。もっとも、コメ栽培自体は中国が発祥で、それがインドを経由してペルシアに伝わった。ビリヤニは言わば逆輸入されたコメ料理なのだ。インドにビリヤニが伝わったルートは複数あり、そのため土地ごとにだいぶ異なった料理になっている。日本では「鶏肉の炊き込みご飯」というイメージが強いが、ベジタリアンの多いインドでは「ベジ・ビリヤニ」も普通に供される。また、細長いバスマティライスだけではなく、短形のカイマライスを使ったものもある。
日本のメディアから「世界一甘いスイーツ」と呼ばれている「グラーブ・ジャームン」はドロドロのシロップに浸かったスポンジ状の団子だ。しかし、インドにはそれに負けず劣らぬ甘い菓子がいっぱいある。インドは世界有数の甘味大国なのだ。
★基本データ&目次
| 作者 | 小林真樹 |
| 発行元 | 産業編集センター(わたしの旅ブックス58) |
| 発行年 | 2024 |
| ISBN | 9784863114289 |
- はじめに
- バターチキン
- ナン
- ビリヤニ(北インド)
- コラム インド東西南北・忘れ得ぬ店① 北インド/ハッジ・シャブラティー
- タンドリーチキン
- ターリー
- ミールス
- ダルバート
- コラム インド東西南北・忘れ得ぬ店② 南インド/レイヤーズ・メス
- ファルーダ
- チャパティ
- ドーサ
- コラム インド東西南北・忘れ得ぬ店③ 西インド/ゴディノ
- モモ
- チキン・マンチュリアン
- グラーブ・ジャームン
- コラム インド東西南北・忘れ得ぬ店④ 東インド/スワディン・バーラト・ヒンドゥー・ホテル
- マクドウェル
- チャイ
- ラッシー
- あとがき
★ 感想
私が好きな乃木坂46の40thシングルが「ビリヤニ」というタイトルとのこと。だからこの本を買った訳ではなく、神保町の「ほんまる」で目にして、ついつい買ってしまったのだ。
日本でも正月に食べる雑煮が土地ごとに多くのバリエーションを持っているように、インド料理も当然ながら色々あるようだ。日本のインド料理屋で出されているものはなんだかんだ言って日本用にアレンジした、もしくは日本の中で独自に進化したインド料理のようである。だから、「この料理はこうでなきゃいけない。こんなのは邪道だ」なんて通ぶってウンチクを垂れるのはやめたほうが良さそうだ。
著者はインドはもとより、ネパールやパキスタン、さらには中東の国々まで買付に出かけていっている。そのため、インド料理と思われているものが他の国々でもバリエーション豊かに広がっているのを実際に自分で食してレポートしてくれている。現地のおじさんたちが美味しそうに食べている写真付きだったりするので、納得感も倍増。おいそれとは尋ねることのできない土地ばかりだから余計に興味が湧いてきた。文化論としても楽しめた一冊だった。
各料理のルーツやバリエーションを知った上で食べる“日本の”インド料理屋の料理は、これまでと違った味わい方ができそう。インド料理好きの人は特におすすめの一冊でした。
★ ここで買えます
以下、ご参考。


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