以下の内容は、いわゆる「ネタバレ」を含んでいます。
★あらすじ
主人公(グレース)はベッドの上で目を覚ます。が、どこにいるのかも、さらには自分の名前さえ分からない。戸惑いながらも徐々に自分の状況を把握していく。そして、断片的に記憶が蘇ってくる。
太陽と金星との間に謎の光の帯が見つかる。それとともに、太陽光が徐々に弱まっているのが観測された。太陽光が弱まれば地球は寒冷化し、このままでは人も含めて全ての生き物は絶滅すると予測された。 その帯は「ペトロヴァ・ライン」と命名され、無理をして探査機を飛ばし、そこにある物質を地球に持ち帰ることに成功する。分析結果は驚くものだった。ペトロヴァ・ラインに含まれていたのは超微細な“生物”だった。後にアストロファージと名づけられるその生物は太陽エネルギーを食っていたのだ。しかも、金星に飛んで行って(その航跡がペトロヴァ・ライン)二酸化炭素を吸収し、“繁殖”していたのだ。太陽と金星を往復し、数を増やしながらどんどんと太陽のエネルギーを食べていくのがアストロファージだ。
グレースは自分が探査機に乗っていて、アストロファージを“退治する”方法を探るべく別の恒星系にやって来たことを思い出す。彼は数年間の“冬眠状態”から目覚めたところだったのだ。 彼は「生物の発生に水は必須ではない」旨の論文を書いたものの学会からは相手にされず、高校で教師をしていた。それが突如、プロジェクト・ヘイル・メアリーの責任者であるストラッドによって呼び出され、アストロファージの分析・研究をすることになったのだ。
グレースは自分が探査機に乗っていて、アストロファージを“退治する”方法を探るべく別の恒星系にやって来たことを思い出す。彼は数年間の“冬眠状態”から目覚めたところだった訳だ。かくしてアストロファージの秘密を探るミッションが本格的に再開されることとなる。と言っても、未知の恒星系にたどり着いた、たった一人の人間によって。
そんな時、グレースはとんでもないものを発見した。この発見によって物語は思わぬ方へと突き進むこととなる。
★基本データ&目次
| 作者 | Andy Weir |
| 発行元 | 早川書房(ハヤカワ文庫SF) |
| 発行年 | 2026 |
| ISBN | 9784150125066 9784150125073 |
| 原著 | Project Hail Mary |
| 訳者 | 小野田和子 |
- 本文
- 謝辞
- 解説 山岸真
以下、ネタバレ有りの「感想」です。
★ 感想
著者の過去の作品を超える面白さだった。科学的な知識に裏打ちされたシナリオは冴え渡っていて、確かにこんなことが起きても不思議はない、と思わせてくれる。また、宇宙冒険譚としても、次から次とハプニングが起こり、どうやって主人公はこの危機を乗り越えるのだろうかと興奮しながら読み進めていける。さらには、宇宙旅行(いや、冒険か)が始まる前と、始まった後の話が交互に切り替わり、段々と物語の背景が分かってきて、どんどんと話が広がり、深くなっていく仕掛けは良くできている。 “空想科学冒険小説”として最高だった。
主人公はとにかく頭が柔らかい。なんでそんなことを思いつくの?と感心しっぱなし。それでいて彼はちゃんと“生身の人間”であって、決してスーパーヒーローではないところも感情移入がし易い。彼は恐怖の前に取り乱して泣き叫ぶし、事故が起きればちゃんと怪我をする。そんな人間くささもあるという二面性が主人公をより魅力的にしている。
異星人の描き方も独特だ。人間そっくりなリトル・グリーンマンでもなければ、見た目の面白さ・奇妙さだけで作られた蛸人間でもない。でも、サイズ感や思考能力はほぼ人間に近い存在となっている。これもご都合主義の一つかと思いきや、パンスペルミア説を持ち出して「みんな同じ先祖を持つ子孫だから“ある程度”は共通点があってもおかしくない」としている。さすがです。それを言われては納得せざるを得ません。その上で異星人(?)を、刺胞動物門のように口が唯一の開口部として摂食と排泄の両方に使われる存在にしているところがひねりが効いていて面白い。完全消化管(口と肛門が別)であることと、知能の発達とは別であってもいいということか。こんな宇宙人、初めてです。
とにかく最後まであっという間に読み進めてしまった感じだ。アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」以来の興奮度合いだったかも。とにかくこれは読むべき一冊です。
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