インフォグラフィックスの潮流

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★あらすじ

古くから発達した壌方図は「地図」だろう。英語の”map”は地理的な地図だけではなく、図面化・関連付けの意味もあり、人体図や歴史年表もマップの一種と言える。

時代が進み、世界で初めての地下鉄が1863年にロンドンで造られると併せて「鉄道路線図」や「鉄道時刻表」も作られた。十九世紀そして二十世紀に初めまで、路線図はいわゆる「地図」の上に地理的な正確さを持って描かれていた。しかし、1933年に「ベックマップ」が登場し、一変する。路線は縦横の直線と、45度の斜め直線のみを使って描かれ、駅間の“距離”も一定間隔で書かれたのだ。ハリー・ベックによるこの路線図の描き方はその後も改善が加えられるものの、現在に至るまで基本的には変わっていない。

ルネサンス時代のヨーロッパで発達した銅販印刷により、図版を用いた印刷物が広まって行く。植物、動物を描いた博物誌が作られる。そして、1728年にロンドンで「サイクロペディア」が刊行され、それに触発される形で1751年から「百科全書」の出版が始まる。それらは、動植物はもとより、船舶や印刷機の構造などを詳細に描いた図版が用いられている。

十八世紀終わり頃には、統計情報をグラフに表したものが登場する。1786年の「商業および政治の見取り図」は、イギリスと諸外国間の貿易などに関する統計を棒グラフ、折れ線グラフなどによって表していた。
その後、二十世紀になると統計情報を分かり易く表すためにピクトグラムなどの手法が生まれてくる。そしてウィーンではアイソタイプと名づけられた手法が生み出される。シンボル(単語)と変換(文法)によって、絵に言語的な体系を与えるもので、視覚言語は大きな潮流となっていった。

★基本データ&目次

作者永原康史
発行元誠文堂新光社
発行年2016
副題情報と図解の近代史
ISBN9784416115497
  • はじめに
  • 第1章 都市交通図 ― モダニズムの美学
  • 第2章 図解と統計 ― 啓蒙の時代の情報図
  • 第3章 視覚言語 ― 20世紀の冒険➀
  • 第4章 可視化と物語化 ― 20世紀の冒険②
  • 第5章 関係図 ― 比喩から抽象へ
  • 第6章 コードのかたち ― 大量情報の時代
  • 終章 情報と図解の近代史
  • あとがき
  • 索引・リスト 人物索引・書誌索引・図版リスト・参考文献

★ 感想

Excelで売上情報をグラフにする、プロジェクトの企画書をPowerPointでビジュアルに作る、なんてのは会社勤めの人には日常の仕事かも知れません。折角作るのだから、分かり易く、インパクトのあるものにしたいなと誰もが願っているでしょう。かく言う私も同じ。そんなことを思っていたところ、本書を見つけ、読んでみようと思ったのでした。

本書ではロンドンの地下鉄路線図の誕生から、現在のインターネット上のビッグデータ解析(いや、解析したものをどう分かり易く表現するか、の方法)までを概観しているんですが、(当たり前かも知れませんが)図表もふんだんに使われているので非常に分かり易かった。
ピクトグラムの歴史、最初はやたらとリアルな人を描いて図示しいていたのが、シルエットになり、簡素なアイコンになると言った流れは、まあそうだよなと納得。でも、やっぱり最初に人型で図示しようと思い立った人の発想は凄いなとも改めて感心させられた。
インターネット時代になると、その進歩は例によって(?)加速しているようだ。つい十年、二十年前のアップルのデスクトップのデザインは、今とは全く異なっている。見ると、「ああ、こうだったなぁ」と思えるんだけど、すっかり忘れてしまっていた。

情報を視覚的に分かり易くする表現、本書で語られるように、今後、もっともっと重要になってくるだろう。ビッグデータの解析結果を何も加工なく見せられたら、それこそ人間には処理できない。いかに視覚化して、ぱっと見に分かるようにするかの工夫は必要だ、ということが、インフォグラフィックスの歴史を見ていってたどり着いた結論だった。

ところで、そんな昔の“インフォグラフィックス”も、今観ると意外と面白いなと思えるものも多く、懐古趣味という訳ではないけど、「これ、使えそう」というものもちらほら。ピクトグラムにリアルな写真を小っちゃくして使ってみるなんてのも良さそう。いつか参考にして会社の資料を作ってみますかね。

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