★あらすじ
宗教象徴図像学の教授であるロバート・ラングドンは、恋人で純粋知性科学者のキャサリン・ソロモンとチェコのプラハに来ていた。それはただの旅行ではなく、キャサリンが近々刊行する書籍に関する講演を行うためのものだった。彼女の著書では、人間の意識に関する新たな、信じがたい発見が語られているという。
その夜、ロバート・ラングドンは悪夢にうなされてよく寝られなかった。彼女がまだ寝ている間に彼はプラハの街に散歩に出る。だが、カレル橋を渡っていると、悪夢で見た通りの光景が彼の前に現れたのだ。黒ずくめの女が近づいてくる。彼女の手には銀の槍。仮装パーティーの帰りなのだろうか。だが、黙ってその女が通り過ぎた後、今度は死の腐敗臭とも言える匂いが彼を襲った。悪夢の通りだ。そして悪夢の中ではこのあと、彼らの留まっているホテルで爆発が起きるのだ。恐怖で錯乱したロバート・ラングドンはホテルに走って帰り、ロビーで叫んだ。「全員の命が危ない! 全員をここから出せ!」
だが、爆発は起きなかった。代わりにキャサリンが、彼女の著書の出版用原稿と共に部屋から消え去っていた。
キャサリンの著書を出版するペンギン・ランダムハウスはニューヨークにオフィスを構えている。そしてここでは別の事件が起きていた。彼女の著書の編集担当者ジョナス・フォークマンの元にIT担当のアレックス・コナンがやって来て、サーバーへの不正アクセスがあったと伝える。さらに調査をすると、著者と編集者だけしかアクセスできない、出版用原稿を保存してある極秘フォルダーのうち、キャサリン・ソロモンの著書用フォルダーだけが消えていたのだ。そして、バックアップをしてあったはずなのに、それも消えていた。このデータがないと出版はできない。秘密保持のため、著者もこのサーバー・フォルダーの上で原稿執筆の作業をすることになっているので、他のパソコンにも残っていないのだ。
ジョナス・フォークマンは校正用にプリントアウトしたものが一部だけ残っているのを思い出した。いまや、これだけが頼りだ。オフィスに置いておくのは、この状況では危険だと考え、別の安全な場所に移そうと思い立つ。だが、それが裏目に出た。彼はプリントアウトした原稿とともに何者かに拉致されてしまったのだ。
ロバート・ラングドンは、キャサリン・ソロモンが招待され、今日そこを訪れることになっていたブリギタ・ゲスネルの研究所を訪ねることにした。だがそれは、ロバート・ラングドン、そしてキャサリン・ソロモンが巻き込まれていく大きな陰謀の序章なのだった。その陰謀は、彼女の著書に書かれている「死後も人の意識は残っている」という大発見に関わるものだった。
★基本データ&目次
| 作者 | Dan Brown |
| 発行元 | Vintage |
| 発行年 | 2026 |
| ISBN | 9780593313015 |
★ 感想
今回はチェコのプラハが舞台。ダン・ブラウンのロバート・ラングドンが登場するシリーズ(「ダ・ヴィンチ・コード」や「天使と悪魔」など)では、サスペンス物ではお馴染みの(?)ご当地名所紹介がふんだんに盛り込まれている。カレル橋やプラハ城、フォリマンカ公園、バスティオン(堡塁)などなどが登場し、そこで事件が起きたり、大脱出劇が繰り広げられたりするのだ。いつもながら、少々ベタすぎる感じもするが、余りにも“知る人ぞ知る”ような場所では「ああ、あそこか!」とはならないので、読者に優しい設定だと言える。
そんな観光地(?)で繰り広げられる鬼ごっこ、いや追跡劇は、その場所に行ったことがある人には「そっちに逃げちゃダメだろう?!」なんてツッコミを入れながら読めるのが楽しい。まあ、ロバート・ラングドンは読者の心配を裏切り、ちゃんと逃げ道を見つけて(作って)しまう。
でも、今回はその途中で彼が蘊蓄を語るシーンが少なかったように思います。そこが寂しかったかな。今回は恋人の著書の中身が“謎”の中心になっているので致し方なし。
それにしても冒頭の、悪夢が正夢になったんじゃないかと思いこんで慌てふためく我らがロバート・ラングドン。あれ、いつものあなたらしくないぞ、と思いながらも読み進めるのだが、それだけ人の“意識”というものが一筋縄には行かないものなんだなと再認識したのでした。
そんな人の意識が身体を離れてふらふらするなんて。でも、仏教の輪廻転生とはまた違って、その意識は“人”であることには変わりないようだ。餓鬼や動植物に宿ってしまうという考えはなさそう。宗教象徴図像学者なんだから、もう少し蘊蓄を語れたんじゃないかなどと、話の筋とは関係ないことが頭に浮かんでしまった。
この作品の下地になっている「CIAが“エスパー”の研究(Stargate Project)をしていた」というのは都市伝説かと思いきや本当だったらしい。となると、その研究が秘密裏に続いていたかもって話もまんざらじゃないのかも、かも、かも。
今回も色々と想像を膨らませながら読める、楽しい作品でした。


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