And Then You’re Dead

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★あらすじ

死亡記事を読んだ時、「不慮の事故で亡くなった」と書いてあると、実際はどのような状況で死んだのか気になったことがないだろうか。飛行機に乗っている時、もし急に窓ガラスがはずれたらどうなるのか? 肌着姿で宇宙空間に放り出されたらどうなるのか? 鯨に飲み込まれたらどうなるのか?など、“不慮の事故”にも色々あるが、そんな状況にあなたが遭遇したら、どのように死んでいくのかを科学的に解説・描写していきたい。

● 飛行機の窓ガラスが急にはずれたら?

答えは高度によって異なる。20,000フィート以下であれば吸い出されてしまうことはないだろう。呼吸も三十分は可能だ。その間に飛行機の高度が下がれば問題はない。
だが、35,000フィートで窓が急にはずれた場合は問題だ。ここでは座席の位置が問題になる。運悪く窓際の席にいた場合はアウト。吸引力に逆らえずに吸い出されてしまう。でも、飛行機の窓ガラスは小さいので、平均的な体格だと途中で引っかかり、あなた自身が“蓋”になるだろう。そのため、窓から一つ離れた席に座っていて、シートベルトを着用しているあなたの友人は吸い出されることはない。
窓の外にぶら下がったあなたには次の問題が生じる。飛行機の外は時速600マイルの風が吹いている。あなたは“J”の字型に折れ曲がってしまうだろう。次は気温だ。35,000フィートの外気温は華氏マイナス65度で、数秒で凍り付いてしまうだろう。だが、もっとも問題なのは気圧だ。35,000フィートの薄い空気では充分な酸素を呼吸によって取り込むことができない。この状況では気を失うまでに十五秒はかからないだろう。そして四分後にはあなたの脳は死んでしまう。

● 鯨に飲み込まれたら?

旧約聖書のヨナの物語では、ヨナは鯨に飲み込まれてしまい、三日後に吐き出されたとされている。では、実際にあなたが鯨に飲み込まれたらどうなるだろうか。飲み込まれるならばマッコウクジラがいいだろう。プランクトンを餌にしている他の鯨だと、喉の太さが4,5インチしかない。そのため、喉に引っかかり、6,000ポンドの舌で潰されてしまうだろう。
マッコウクジラは肉食で、あなたを飲み込むことができる大きな喉を持っている。だが、その先が問題だ。鯨の四つの胃袋のうちの一番目はメタンガスが充満している。メタンガス自体は毒ではないが、酸素のない状態になっているので、あなたは窒息してしまうのだ。無酸素状態では四分間であなたの脳は死んでしまう。また、鯨の胃袋の筋肉はとても強く、あなたはすぐにすりつぶされて、ピーナツバターのようになってしまうだろう。
だが、良いこともある。マッコウクジラの胆管分泌物は「竜涎香」と呼ばれる貴重な香料で、一ポンド六千ドルの価値がある。すりつぶされたあなた(だった“もの”)は竜涎香となってどこかの海岸に流れ着くかも知れない。

★基本データ&目次

作者Cody Cassidy, Paul Doherty
発行元Allen & Unwin
発行年2017
Sub titleA Scientific Exploration of the World’s Most Interesting Ways to Die
  • What would happen if …
  • You were in an airplane and your window popped out?
  • You were attacked by a great white shark?
  • You slipped on a banana peel?
  • You were buried alive?
  • You were attacked by a swarm of bees?
  • You were hit by a meteorite?
  • You lost your head?
  • You put on the world’s loudest headphones?
  • You stowed away on the next moon mission?
  • You were strapped into Dr. Frankenstein’s machine?
  • Your elevator cable broke?
  • You barreled over Niagara Falls?
  • (cont.)

★ 感想

昨年亡くなった科学者のポール(Paul Doherty, the Exploratorium’s Beloved Senior Scientist, Dies at 69 | KQED Science)と、スポーツ編集者のコーディーによる共著。テーマがとにかく斬新。マンガやアニメではよく出てくるシーンが次から次へと紹介され、実際はこうやって死んじゃうんだよ、と言う解説を淡々としていくというもの。いやぁ、エキセントリックです。

どの話も、言われてみれば確かにそうなるだろうなと納得できるものが多い。でも、実際にこのように解説されるまでは「考えてもみなかった」ようなことが一杯。素粒子加速器のビームが手に当たったらどうなるか?だとか、エンパイア・ステート・ビルの屋上から落ちてきたコインにあたったらどうなるか?などは、予想外の結論だった。実際にどうなるかは読んでもらってからのお楽しみ、と言うことで、ここでは結果を伏せておきます。でも、なるほどねぇ、そうだったのか!となること請け合いです。

どんな死に方がもっともいやだろうか。木星や太陽にダイビングしたり、冷蔵庫に閉じ込められたり、深海にポンと投げ込まれたり。どれもろくな死に方じゃなかったのは確か。当たり前だが、人が生きていける環境ってのは非常に微妙なものなのだなと再認識する。酸素濃度がちょっとでも変わったり、気圧が下がったり・上がったり、気温が上がったり・下がったりするだけで、人間はすぐにギブアップしてしまう。血流が止まって、脳が死んでしまう。高熱で瞬時に“蒸発”してしまう。気圧・水圧で潰されてしまう。さらにはプラズマにまで一気になっちゃうこともあるようだ。今、生きているこの環境を大事にしていかないといけないと痛感する。本書ほどの極限状態ではないにしろ、最近の異常気象は我々の生存極限環境から逸脱するんじゃないかの恐ろしさがある。
そんなことも考えさせてくれた一冊でした。

ちなみに、値段的に言うと訳本(「とんでもない死に方の科学」)よりは原書、しかも電子書籍がおすすめ。Kindle版ならば510円(2018/07/08時点の値段)で購入できます。

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● 日本語訳 「とんでもない死に方の科学」


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