世界はラテン語でできている

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★あらすじ

我々は気づかずにラテン語に接していて、ラテン語由来の言葉に触れている。日本人もラテン語を学ぶ意義はあり、ラテン語を学べば現代社会で目にする難しそうな言葉を理解する助けにもなる。しかも、古代ローマ時代の発音はいわゆるローマ字読みに近く、欧米人よりも我々日本人の方がより近い発音ができる。

イタリア半島の一都市の言語だったラテン語は、古代ローマの拡大に伴って適用範囲を広げ、その後もヨーロッパの「書き言葉」として広く使われ、現在のフランス語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ルーマニア語などの元となる。イングランドでも文人たちを通して英語の語彙に影響を及ぼす。
さらには、近代までラテン語は学者たちの共通言語として使われ、論文・書物はラテン語で書かれていた。

そして、今でもラテン語は色々な語彙の元となり、現代の我々も知らずにそれらを使っている。以下、いくつか例を示す。

ロマンス(romance)の語源はラテン語のromanice(俗語の)。俗語で書かれた文学作品の中に恋愛ものが見られることに由来する。

人間は三つの点や線が集まった逆三角形を見つけると、つい二つの目と口、詰まり顔に見立ててしまう本能があります。これは「シミュラクラ現象」と呼ばれているのですが、simulacraは「似姿」という意味のラテン語で、これもsimilisからの派生語です。

返信のメールの件名にある”Re:”は、英語のreply「返信」の意味ではなく、ラテン語のin re「~に関して」の略です。

★基本データ&目次

作者ラテン語さん
発行元SBクリエイティブ
発行年2024
ISBN9784815621261
  • はじめに
  • 第1章 ラテン語と世界史
  • 第2章 ラテン語と政治
  • 第3章 ラテン語と宗教
  • 第4章 ラテン語と科学
  • 第5章 ラテン語と現代
  • 第6章 ラテン語と日本
  • 巻末特別対談 ヤマザキマリxラテン語さん
  • 主な参考文献

★ 感想

著者はラテン語研究者で、X(旧Twitter)でもラテン語に関する情報を発信している(@latina_sama)。私もフォローしていて、それで本書を知った次第。
本書は、そんな著者によるラテン語に関するエッセイ的入門書。入門書と言っても文法がどうだの構文がなんだのというものではなく、「ラテン語は意外と身近な存在で、知っていると楽しい」ということを伝えるのが主たる狙いだと思われる。ラテン語の入門書と言う訳ではないので、その点はご注意を。

政治、宗教、科学など、各分野でラテン語が如何に使われていたか、いや、今でも直接・間接的に使われているか、例を挙げて説明している。クイズに出てきそうな、ちょっと雑学的な話題から、政治家の演説まで色々だ。知っている言葉も多いが、それがラテン語由来だったことを初めて知るものも少なくない。なるほど、著者が言う通りにラテン語は死語ではなく、今も生きているんだと思えてきた。

日本語とは全く異なり、英語とも違っているラテン語。私も挑戦してみたが、続かずに挫折してしまっている。格、性など、文法として覚えようとするとかなり厳しい。とは言え、ローマ帝国の属州となった国々はもちろん、その後も欧米を中心に「世界標準語」として近代まで使われてきた訳だから、習得は無理と言うことはないはず。確かに、格変化がしっかりしているから曖昧さが少なく、法律や科学などを語るには適している気もする。それに、ラテン語を習得すれば、ローマ時代から近代までの約二千年間の著作物を(ある程度)読むことができるかもしれないというのはとっても魅力的だ。

本書は、「ラテン語、勉強してみようかな」という気にさせてくれる。やっぱりラテン語って“使える”言語だ、ラテン語って面白そう、と。私も、もう一度挑戦しようかなと言う気になった。
いきなりラテン語の入門書を読む前に本書を読んで興味を高めるというのは良さそうだ。また、ラテン語を題材にしたエッセイのようなものだと思ってもいいかも。

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