★あらすじ
「信長公記」は太田牛一が慶長年間(1600年頃)に著した、織田信長の伝記である。著者は織田信長に仕えた武士で、信長の生涯を実見していた。そのため、歴史書としても信用度は高い。年代記として書かれている。ただし、日記のように日付の後に起きた出来事を記している箇所もあれば、出来事単位で書かれている部分もある。
吉法師は元服して織田三郎信長と名乗ることとなる。そして、斉藤山城守道三の婿とする縁組みがととのい、娘を尾張に迎える。十六~十八の頃までは、信長は馬術を朝夕に稽古し、川で水練をして過ごしている。しかし、身なり・振る舞いは見苦しいこともあり、人々は「大馬鹿者」と思っていた。
尾張の守護は斯波氏だったが、織田一族が実権を握っていた。信長が当主となった頃は各地域にそれぞれ織田一族の誰それが勢力を持ち、互いに争っている状態だった。そして、斯波氏一族は清洲城に屋敷を設けて暮らしていたが、坂井大膳・織田三位などに攻められ、自害させられる。が、すぐに織田信光が信長と通じて坂井大膳を城から追い出し、清洲城を乗っ取ってしまう。
★基本データ&目次
| 作者 | 太田牛一 |
| 発行元 | 中経出版 (新人物文庫) |
| 発行年 | 2013 |
| ISBN | 9784046000019 |
| 訳者 | 中川太古 |
- 首巻 入京以前
- 巻一 永禄十一年
- 巻二 永禄十二年
- 巻三 元亀元年
- 巻四 元亀二年
- 巻五 元亀三年
- 巻六 元亀四年
- 巻七 天正二年
- 巻八 天正三年
- 巻九 天正四年
- 巻十 天正五年
- 巻十一 天正六年
- 巻十二 天正七年
- 巻十三 天正八年
- 巻十四 天正九年
- 巻十五 天正十年
- 「信長公記」関係系図
- 「信長公記」記事年表
★ 感想
言わずと知れた織田信長の“伝記”だ。「知っているけど読んだことのない本」の一冊だったが、今回、やっと読んでみた。著者の太田牛一は長年、信長に仕えた武士なので、その中身はもちろん“贔屓目”があるだろうことを前提に読まねばならないだろう。だが、その記述は意外と淡々としていて、信長を過度に持ち上げることはしていないように思えた。負け戦も(淡々とではあるが)記述しているし、やたらと敵を皆殺しにしてしまう残虐な面も何度も出てくる。もちろん、相手方が悪かったので信長は正義のためにしたのだという言い訳はしているけど。
本当か嘘か、信長がある宿場の障害者に情けをかけ、住民にその人の面倒を見るよう命令した、なんて逸話が載っている。敵となれば女子どもも容赦なく皆殺しにするのに、これが本当の話ならば信長の価値観というか、倫理観が分からなくなってしまう話だ。
あと、信長は天皇や公家衆に対しても多くの金銀を分配し、所領も与えたそうだ。御所の修復なども手がけている。物語の中の彼は、自分が日本の帝王になるんだ的な野心家に描かれることが多いが、実際は既存の権威ともちゃんと関係を築こうとしていて、着実なステップアップを目指していたようで、ちょっと味方が変わったかも知れない。
それにしても、合戦の話が多い。姉川の合戦で浅井・朝倉に大打撃を与えても、越前平定までには何度も何度も戦いを続けている。また、一旦は占領した土地でも謀反や一揆が起きてしまうこともしばしば。一生に渡って戦い続けていたのだと再認識した。いや、これは大変だったろう。もちろん、祭(左義長)を催したり、社寺に参拝したり、茶会を開いたり、鷹狩りをしたりとある程度のリクリエーションはあったようだけど、それでも心から休める時はなかったんだろうと思われる。「お疲れ様でした」と声をかけたくなってしまった。
2026年の大河ドラマでは小栗旬が織田信長を演じているが、さて、どんな風に描かれていくのだろうか。その予習としてもいま読んでおいて良かった一冊だった。


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