★あらすじ
ラジオパーソナリティ、文筆家、報道番組のコメンテーター、タクシー広告の人などなど、多方面で活躍する山崎怜奈がその半生(物心ついてから二十九歳の現在まで)を綴ったエッセイ。
「子ども」や「女の子」という枠組みで勝手に決めつけられることに疑問を持つ子どもだった。属性に対する先入観や誰かの期待に縛られることへの「アレルギー」のような感覚だった。それは今も残っている。
自分が何かした時、しようとした時、両親から「なぜそれをするのか?」と理由を問われてきた。逆に、質問をすると両親は自分を子ども扱いせず、きちんと説明をしてくれた。両親が分からない事柄であれば「自分で調べてみな」と言われる。そのため、携帯電話や本を読んだりして調べてみた。知ることって楽しいと思うようになった。
映画で竹内結子を観て一目惚れし、自分も映画に出る人になりたいと思い、小学生の頃、子役事務所に入った。だが、オーディションに落ちまくる日々だった。映画「クローズド・ノート」に出演でき、憧れの竹内結子演じる先生の生徒役ができたのは良い想い出だ。しかし、中学進学を機に学業に専念するため、芸能界から撤退した。
乃木坂46のオーディションに応募したのは母親。自分は全く知らなかった。
乃木坂46に在籍しながらなぜ大学受験をしたのか。今では多くのメンバーが大学に通いつつ活動するようになったが、当時は在籍中に受験し、さらに四年で卒業するなどは不可能と思われていた。
芸能の世界一本で生涯を全うできる確信は持てなかった。学業とどちらもやらねばという思いだった。だが、大学での講義、レポート、テストと、乃木坂46の活動(コンサートのリハーサルや本番、ファンとの交流会、様々な媒体用の写真撮影など)とを両立させるのは過酷だった。湘南新宿ラインで寝過ごし、渋谷で降りねばならないのに大宮まで行ってしまったり、アンダーライブの翌日には小田急線で新宿へ向かっていたのに、気が付いたら鶴巻温泉駅だったり。とにかく、日々、目の前のタスクをこなすことに精一杯だった。しかし、その経験のどれもが今となっては貴重な財産になっているのは確かだ。
★基本データ&目次
| 作者 | 山崎怜奈 |
| 発行元 | 角川春樹事務所 |
| 発行年 | 2026 |
| ISBN | 9784758415064 |
- 序章 すべては果てしない賭け
- 第一章 観察する子ども
- 第二章 思いがけなかったアイドルへの道
- 第三章 大変だった学業と仕事の両立
- 第四章 肩書きに縛られない生き方
- 第五章 働く環境は自分で整える
- 第六章 人間関係を大切に
- 第七章 働き方と人生の選択は自分でつかみとる
- あとがき
★ 感想
「努力家」と一言で語ってしまうには余りにも彼女の“努力”は桁違いだ。自分の娘よりも年下だが、年齢や性別など全く関係なく、本当に尊敬する。
自分を俯瞰してみる目を常に持っている人なんだということを再認識した。子どもの頃に考えていたことや、その場で感じた気持ちをしっかりと分析的に記憶できているということは、感情や情動が強かったからだけではなく、自分自身を客観的に見ていたということだろう。「思ったことや感じたことをメモに残す」ことも日常的に行っていたと語っていたから、”外部記憶”も含めてのことだが、それでもすごい。いや、そんなことをちゃんと言葉にして残せるということ自体もなかなかできるものではない。
見習いたい習慣だ。
「失敗」とか「後悔」といった言葉を肯定的なものとして捉えている。それらはTrial & Errorのオプションの一つで、成功の道を選び出すための過程だということなのだろう。「すべては果てしない賭け」とはいうものの、むやみやたらとサイコロを振り続けているわけではない。きちんと状況を見極め、賭けるべき次の一手を考えている。しかも、その場その場の戦術レベルの判断を繰り返しているだけではない。「自分で稼いでちゃんと生きていく」という基本原理に基づいた賭けを行っている訳だ。しかも、その賭けを通して自分を高めていくことを成し遂げている。強い精神力と一言で片付けてしまうには余りにも強靭すぎる。人生の処世術ということなのだろうか、そうそう真似できるものでもない。だが、その生きる姿勢そのものには感服する。
ただ気になるのは、彼女は戦略的レベルでの「ゴール」については語っていないことだ。「良き人でありたい」といった抽象的な話はしているが、何になりたいとか、何をしたいといった話は明確ではない。もちろん、まだ二十代なのだからまだまだ色々と見て経験した上で考えていこうとしているのかもしれない。もしくは、やりたいことよりもやれることを選び、その役を演じ続けようとしているのかもしれない。
ファンの一人としては彼女がどのような選択をしても応援し続けたい。
余りにもストイックすぎる彼女の生き方を真似するのは至難の業だが、将来の道探しに迷っている人や、何かの決断を躊躇している人には是非読んでもらいたい一冊だ。


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