★あらすじ
著者とそのチームは、ソマリア現地政府・政府軍と共同で、テロ組織アル・シャバーブの戦闘員に投降を呼びかけている。ビラを配ったり、地元氏族の長老らを通して呼びかけを行うと、投降希望者はホットラインに電話をしてくる仕組みだ。とは言え、アル・シャバーブの支配地域にまで入り込むことはできない。境界地域まで投降希望者は自力でやってくるしかない。著者のチームも危険と隣り合わせでランデブー地点まで出向き、彼らを迎える。その後、著者らが作ったリハビリテーション施設・社会復帰プログラムによって投降兵が自立できるよう支援している。
当然、アル・シャバーブから著者らに脅迫が来る。著者らは移動手段として防弾加工された四輪駆動ピックアップトラックを利用しているが、それ以上に強力な武器で攻撃されたら命の保証はない。実際、関係者が命を落としている。
国境なき医師団や国際赤十字は“どちらにも組みしない中立”を守り、どうしようもない状態になったら撤退する。しかし、著者らの活動は政府軍と連携することが多いので中立とは言えず、テロ組織から敵視されることとなる。また、そのような危険があっても撤退することはない。
投降兵リハビリテーション施設の他、著者らの活動は紛争地の刑務所でも行われている。そこではテロ事件に関わった容疑で多数の“テロリスト”が投獄されている。彼らに対しても脱過激化・社会復帰プログラムを実施しているのだ。
また、イスラーム教にしても偏った(過激な)解釈を叩き込まれてしまっている投降者・囚人たち。そのためにイスラーム教再教育プログラムもイマーム(イスラーム教の導師・指導者)の協力の下、行っている。
著者が大学入学直前に東日本大震災が起き、瓦礫撤去のボランティア活動に参加した。大学入学後、ソマリアの大飢饉のことを知り、二十六万人もの人が死んでしまったことに驚き、この悲劇を何とかしなければならないという使命感を感じた。その後、隣国ケニアに渡ってソマリアギャング(ソマリアからの難民が組織した犯罪集団)たちと直接“交流”することで、彼らも自分と同じ若者であることを知り、彼らがこうなってしまった原因である紛争を何とかしなければとさらに強く思うようになる。かくして、著者の行動はソマリアでの投降ホットラインに繋がっていったのだった。
★基本データ&目次
| 作者 | 永井陽右 |
| 発行元 | 小学館 |
| 発行年 | 2023 |
| ISBN | 9784093888943 |
- はじめに
- 第1章 テロ組織から兵士の投降を導く
- 第2章 紛争の最前線
- 第3章 紛争地の刑務所
- 第4章 ソマリアギャングからの教え
- 第5章 理想と現実のはざまで
- 第6章 「テロや紛争のない世界」を実現するために
- おわりに
- 著者プロフィール
★ 感想
こんな“仕事”が世の中にあるのか?!という驚きが最初の印象。NGOの「国境なき医師団」も命の危険にさらされながら頑張っている訳ですが、テロ組織と真っ向からぶつかる筆者の“仕事”は本当に危険。兵士を投降させるって、あちらからすればテロ組織の“財産”を奪うことになるのだから、そりゃぁ脅迫もされるでしょうし、報復も受けるでしょう。なんて立派な仕事をしているんだ、という賞賛の気持ちの前に、なんでこんなに危ないことをしているんだ?!というビックリの方が先に来てしまった。
私は以前、
を読んだり、その前に映画でブラックホーク・ダウンを観たりして、ソマリアについてのイメージがそんな風(つまりはとても危険な場所)という形で固まってしまっていた。本を読んだり、その前に映画で「ブラックホーク・ダウン」を観たりして、ソマリアについてのイメージが「とても危険な場所」といった形で固まってしまっていた。その後も自爆テロのニュースなどをよく聞く。近寄りたいとも思えない国だ。それなのに著者は、自ら進んでこの国に赴いている。収入を得るためだけの「仕事」というならば他にもいくらでもあるだろうに。。。
著者はそれを使命感だという。やるかやらないかという自分の意思、それが重要なのだと語っている。最後まで納得はできるが、共感はできないと素直に思ってしまった。自分には無理だ。
本書の中では、著者は学生時代にソマリアのことを知って、それ以来、彼らを救うことが自分の使命だと思うようになり、今に至ったそうだ。うむ、その書きっぷりが余りにもサラッとしている。こんなに凄いことをしているというのに、その始まりがそんなことだったなんて。
著者に事故のないよう願うばかりだ。



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