オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン

★あらすじ

かつて、ノルウェーのオスロ警察には、殺人捜査のプロフェッショナルたちが集まった特別なチームがあった。だが、ミア・クリューゲルが起こした“事件”によって解散の憂き目に遭う。チームのリーダーだった敏腕刑事ホールゲル・ムンクは地方警察に左遷されてしまい、他のメンバーも散り散りバラバラに。そして彼女は、その事件の発端となった姉の死も重なって心を病み、一人、孤島に移り住み、死を望む日々を送っていた。
だが、新たな事件が彼らを再結成させることになったのだ。

オスロ郊外のマリダレン渓谷。その森のなかで少女が遺体となって発見される。少女は木に吊され、息絶えていた。人形のようなドレスを着せられ、スクールバッグを背負い、首には空港会社がひとり旅の子どもに付けるタグがかけられていた。そこには「ひとり旅をしています(アイム・トラベリング・アローン)」と書かれていたのだ。
そして、“ひとり旅”をさせらた少女はひとりではなかった。親にニグレクトされているトビアス・イーフェルセンと弟は、森の中にふたりだけの秘密の場所を持っていた。弓矢を作って飛ばして遊んだり、空想の中でヒーローになっていたのだ。今日もそんな風に森で遊んでいた兄弟。弟は森のなかで“空を飛ぶ天使”を見つけたのだ。そう、それは二人目の少女だった。またも、木に吊され、ドレスを着せられ、そして首には同じタグがぶら下げられていたのだ。

そんな猟奇的な連続殺人事件は、たちまち世間の注目を集めるようになる。マスコミも連日、報道合戦を繰り広げていた。警察としてはなんとしても解決せねばならない最重要課題となっていた。かくして、あのチームがふたたび呼び戻されることとなった。
オスロ警察殺人捜査課特別班はホールゲル・ムンクをリーダーとして、この難事件に立ち向かい始める。ムンクは、メンバーの個性や能力を把握していて、すぐにチームをまとめるのだ。中でもミア・クリューゲルは直感に優れていた。現場の様子を人とは異なった観点から“読み解き”、犯人の心理に迫ることができるのだ。
だが、さすがのミアもこの犯人のメッセージを見出すのは困難を極めた。少女たちが背負っていたスクールバッグには教科書もちゃんと収められていた。そして、教科書には名前も書かれていた。二人目の少女の教科書にはその子の名前が書かれていたのだが、一人目の少女の教科書には別人の名前が書かれていた。実はその名前、六年前に起きた新生児誘拐事件の犯人に繋がるものだったのだ。

★基本データ&目次

作者Samuel Bjork(サムエル・ビョルク)
発行元ディスカヴァー・トゥエンティワン
発行年2016
訳者中谷友紀子

★ 感想

北欧発の推理小説というと、スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」シリーズ(ドラゴン・タトゥーの女、等)を思い出す。冬の北欧のあの陰鬱な雰囲気一杯の、バイオレンス・ミステリーだった。そしてこの著者サムエル・ビョルクもノルウェーの作家と言うことでちょっと似た空気感を持った作品だった。
登場人物が、犯人や怪しげな“容疑者”はサイコパス的であるのはもちろん、刑事(ミア・クリューゲルやホールゲル・ムンク)たちも心を病んでいて闇を感じさせる。さらには謎の宗教集団やら、育児放棄にあった子供たちやら、瞳の色が左右で異なっている謎の女やらが登場し、ダークな雰囲気が一杯。ひとりひとりが思わせぶりな調子で話をかき回してくれる。アメリカなどとはまた違った社会問題を抱えた北欧という舞台はサイコ・サスペンスに向いていると言うことだろうか。そして、それらの話が交錯しつつ、一つにまとまっていくプロットの組み合わせは、文庫判で727ページの大著ながら一気に読ませる魅力があった。
また、ヒロインのミア・クリューゲルは、オリエンタルな顔立ちをした美女として描かれている。“あの事件”のせいでSNSでもファンサイトができるほどだと。これはもう、映像化を意識したとしか思えない。かの「ミレニアム」シリーズは映画にドラマにとヒットを飛ばしていたので、この作品にも期待が持てるだろう。

と言いつつ、少々話を広げすぎたのか、事件解決のくだりに来て急ぎすぎの感じがしたのは否めない。こっちだったか!と思わせてくれる犯人の正体だったのだが、動機やらサイコパスなところの“紹介”が短くて、納得感が薄れてしまったのは残念。せっかく700ページも書いたのだから、あと100ページ足しても良かったかも。

とは言え、殺人捜査課特別班のメンバーは魅力的。一冊だけではなく、シリーズとして楽しめる要素が一杯だ。実際、訳書でも二巻目「オスロ警察殺人捜査課特別班 フクロウの囁き」が既に出ているし、訳本はまだだが三巻目「The Boy in the Headlights」も出版されている。これは近いうちに映像化されるかな。その前に、“観る前に読む”のがいいかも。

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