みる・よむ・あるく 東京の歴史 6

★あらすじ

本シリーズの地帯編(各区・地域)では、それぞれの地域に対するいくつかのトピックスを挙げ、さらに各トピックについて

  • みる:古文書、絵図、写真などを用いて、トピックの要旨を示す。
  • よむ:「みる」で示した基本資料を掘り下げ、解説する。
  • あるく:「みる」「よむ」で取り上げた場所の現在の様子を紹介し、史跡や関連施設を巡るコースを紹介する。

という構成になっている。

品川の中世(室町時代の頃)を示す資料として「紙本着色妙国寺絵図」を取り上げる。廻船業で財を成した鈴木道胤の財政的バックアップによって栄えた寺院で、品川が重要な港町であったことを示している。絵図には運搬船や、馬で荷を運ぶ人などが描かれ、当時の活気ある様子を伝えている。
室町幕府の東国支配機構である鎌倉府の元、港湾都市品川は発展していく。そこでは商人たちが力を持つようになり、また連歌の会がしばしば持たれるなど、文化的にも華開いたのだ。
その後も品川では多くの寺院が建てられたが、現在でも多くが残っている。妙国寺では五重塔の礎石が見られ、観音堂は現在の品川寺(ほんせんじ)の水月観音として伝わっている。

大田区の京浜急行「梅屋敷」駅そばには、駅名が示すように「梅屋敷」という観光スポットがあった。「みる」では、「鎌田梅屋敷」の絵はがきを紹介している。明治末期に発行されたものだ。文政年間(1820年頃)、薬業で財を成した山本忠左衛門(もしくはその息子である久三郎)が、三千坪にも及ぶ梅園を整備し、茶屋も設けて「鎌田梅屋敷」と称した。それが人気を博し、徳川将軍が鷹狩りの休憩所にしたり、明治天皇が何度も行幸したりするようになる。
「遊園」として発展していった梅屋敷とその周辺だが、その後の都市化と、行楽に対する人びとの意識の変化(男性客中心の“花街”と、家族連れで楽しめる行楽地との二極化)などによって廃れてしまう。そして、東京市による各地の公園整備の中で梅屋敷も公園として今に残る形となった。
かつての茶屋も一時は保存されていたが、戦災などで焼失してしまい、今、「聖跡鎌田梅屋敷公園」には日清・日露戦争に関する石碑などが残るのみとなっている。

★基本データ&目次

作者池享, 櫻井良樹, 陣内秀信, 西木浩一, 吉田伸之
発行元吉川弘文館
発行年2019
副題地帯編3 品川区・大田区・目黒区・世田谷区 
ISBN9784642068314
  • 刊行のことば
  • シリーズの読み方
  • 序章 東京南部の四つの区と多摩川
  • 第一章 品川区・目黒区
  • 第二章 大田区
  • 第三章 世田谷区
  • 第四章 多摩川河口と汽水域
  • 年表

★ 感想

私は世田谷区に住んでいる。そして職場は品川区だ。自宅の周りや、職場の周りを散歩することもよくあり、“郷土の歴史”には興味が尽きない。だが、郷土史を書いた書物は色々と出ているだろうがどれもマイナーなため、入手は困難だし、出版部数も少ないので概して高額だ。図書館に行って読む、というのが一般的だろう。そんな時、このシリーズを知り、まずは自分の住む世田谷が載っている六巻目を購入してみた。大判で写真や図版も豊富なのでこの値段は妥当でしょう。

さて、肝心の中身ですが、なかなか興味深い話が多かった。通史と言うよりも、その土地のトピックスを取り上げている感じだが、その御蔭で「これは初めて聞いた。知らなかった」という話題がいっぱい。
我が街世田谷の最初の話題は「下掃除(しもそうじ)」。初めましての言葉でした。江戸時代には、江戸市中に生産物を供給する農村地帯だったんですね。そのために、江戸の武家屋敷から肥料(詰まりは排泄物)をもらい受けて(対価は金線だったり、物納だったり、使役だったり)いたそうです。その需給バランスが崩れた時に世田谷の農民代表が“文句”を言った文章が残っているというもの。
色々な説明をされるよりも、我が街はその昔は“田舎”だったと言うことが非常に良く理解できた。そして、その後の住宅地への変遷もこの調子で分かり易いトピックスによって示してくれ、より深く自分の街を知ることができたのでした。

ただ、「あるく」コーナーはもう少し散歩のお供に使えるように、名所旧跡・史跡巡りのコースを細かく紹介してくれたらうれしかったかな。まあ、今はこの本を読みながらGoogle Mapで現在の様子をチェック・確認もできるから、許容できる範囲でしょうか。それに、2019年発行だから、情報は既に数年前のもの。もう現地の様子は変わっているかも知れないから、歴史を語るよりも「今」の様子を示す方が難しいのかも知れませんね。

他の街もこの調子で知りたくなりました。また、シリーズの1~3巻は先史時代からの東京の通史とのこと。そちらも徐々に読んでいきたいと思います。

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