犯罪捜査の心理学

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★あらすじ

殺人事件の動機はほとんどが「金か愛」に絡んだもの。その場合、犯人は被害者と何らかの繋がりがあるので捜査は容易だ。しかし、被害者・加害者間関係のない(もしくは一方的な関係)場合、捜査は途端に困難になる。殺人自体が目的の“連続殺人”事件などだ。アメリカのFBIは1960年代後半、このような事件に対応するための研究プロジェクトを発足する。これがのちに「プロファイリング」となっていく。方法はシンプル。個々の事件に拘るのではなく、連続殺人事件のデータを収集し、データベース化したのだ。そしてそこから「秩序型」と「無秩序型」というパターンを見いだしていった。

その後、研究はさらに進む。「犯人は被害者に目隠しする」や「犯人は遺体を切断している」などの特徴的行動を細かく分析し、どの行動とどの行動が一緒に行われるのか、もしくは行われないのかといった“関係”をマップにしていく。これにより、さらに行動パターンを詳細に分析・把握することができるようになった。

犯罪が発生した場所に注目した分析手法も研究されていく。犯人は自分の住んでいるところを拠点に犯罪を重ねる場合と、“通勤モデル”とのちに命名されるような、自宅からどこか離れた場所に行ったん移動し、その地点をベースに周囲で犯罪を重ねるパターンがあることが分かってくる。これは「地理的プロファイリング」と呼ばれ、犯人の居住地を推測するのに役に立つ。また、次にどこで犯罪が行われるかをある程度予想することもでき、犯罪抑止や犯人逮捕に繋がることとなる。

映画やTVドラマでは“プロファイラー”は超人的能力を持つ人のように描かれるが、実際のプロファイリングは地味な作業で、プロファイリングする人は現場からの情報を分析し、結果を報告するだけで、犯人逮捕に自ら臨むことはない。また、その解析結果も統計的な形となるので、いつも正しいという訳でもない。プロファイリングの研究は今も地道に続いていて、今後も犯罪捜査の大きな力となっていくだろう。

★基本データ&目次

作者越智啓太
発行元化学同人(DOJIN文庫)
発行年2026
副題プロファイリングで犯人に迫る
ISBN9784759825046
  • まえがき
  • 第1章 FBIによるプロファイリングプロジェクト
  • 第2章 プロファイリングの新たな展開――リヴァプール方式
  • 第3章 犯人の居住地を推定する
  • 第4章 犯人の危険性を推定する
  • 第5章 犯人の動機を推定する
  • 補章 プロファイリング研究――その後の15年
  • 引用文献・参考文献
  • あとがき
  • 文庫版あとがき

★ 感想

TVドラマや映画で観る“プロファイラー”はエスパーのような存在だけど、やはり本物はかなり地味なようだ。つまりは統計学を駆使して過去の事例を分析し、それを今起きている事件に適用してみる、ということ。連続殺人が推理小説やドラマくらい頻繁に起きればサンプル数も稼げるだろうけど、幸か不幸か現実はそこまでではないよう。プロファイリング研究には大きな制限になっているのだろうけど、そもそもそんな事件が起きない方が良い訳で、ここはなんとも歯痒いものがある。

文庫になる前の単行本は2008年発行のようなので、話の内容は20年前のものがほとんど。「補章」のみが文庫化の際に追記されたもの。そこからさらに世界は変わっていって、現在はAIがものすごい勢いで進歩している時代。補章でも触れられているが、統計的手法に加えて、ビッグデータをAIで“解析”することによってさらなる進展があるのだろう。著者は「AIは答えを出してくれるが、その根拠は示さない。そのため、刑事司法の領域では適応が難しい」旨を述べている。AIのこの問題はプロファイリングだけではなく、一般的な問題として認識されているが、著者も最後に述べているベイズ統計学(過去の経験や予測(事前確率)をベースに、新しいデータが得られるたびにその確率をより確からしいものへと更新(ベイズ更新)していく、柔軟な予測と学習を得意とする統計学の手法)はAIと相性が良さそうだし、期待が持てそう。

プロファイル研究の基本って、犯罪者の犯行の“特徴”を分類して、分析している訳だけど、文字になってみると改めて「これはエロでグロだ」と思わざるを得ない。特に性犯罪はそう。誰しも(私も)フェチな趣向は多少なりとも持っているだろうけど、それが犯罪にまで拡張されると、読んでいるだけでも”うぅっ”て声が出そうになる。強い精神力を持っていないと研究とはいえ、気が滅入りそう。

本文でも、そして章ごとに設けられたコラムでもちょこちょこプロファイルの話が出てくる映画やドラマの紹介をしてくれている。本物のプロファイルとはここが違っているという指摘をしつつも、著者もエンタメ作品としてそれらを楽しんでいる様子。こちらも「観てみようかな」という気になった。

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