ビブリア古書堂の事件手帖7

記事内にアフィリエイト広告が含まれています。

★あらすじ

シリーズ七作目にして完結編。

強欲な古書店主だった久我山尚大。欲しいと思った本は手段を選ばずに手に入れ、そして売る時も相手に無理矢理にでも押しつける。そんな彼が遺品として残したのはシェークスピア作品の初版の複写本だった。それは、コピーではあるが豪華に革装丁されていた。

ビブリア古書堂の店主である篠川栞子は、洋書にはそれほど詳しくはないと自分では言いながら、母親である篠川智恵子の知識を受け継いだのか、人並み以上の見識を持っていた。店員であり、恋人でもある五浦大輔に、その複写本の特徴・普通とは違う点を、いつもの通りに語り出すのだった。
シェークスピアの時代、活字印刷は既に行われていたものの、手作業での印刷だったために乱丁・落丁も多かった。そのため、同じ初版本と言いながら一冊ずつ、ちょっとずつ違いがある(ミスした場所)があるのだ。そんな特徴は調査・研究の対象となり、初版本のリストが作られるほどだ。そして篠川栞子は気が付いたのだ。この複写本はそのリストに載っている・知られているどの初版本とも違った箇所があることに。もしそれが正しいとすると、この複写本の元となったものは、今まで世間に知られていなかった“幻の初版本”ということになるのだ。
篠川智恵子もそのことを知ってかどうか、また突如として篠川栞子・五浦大輔の前に現れる。

そんな折、久我山尚大の元で古書店の番頭のような役割をしていた吉原喜市がビブリア古書堂にやってくる。彼は今、古道具店の舞砂道具店の店主をしているのだ。

かくして、シェークスピアの幻の初版本を巡って三者の争いが始まった。

★基本データ&目次

作者三上 延
発行元KADOKAWA(メディアワークス文庫)
発行年2017
副題栞子さんと果てない舞台
ISBN9784048926409
  • プロローグ
  • 第一章 「歓び以外の思いは」
  • 第二章 「わたしはわたしではない」
  • 第三章 「覚悟がすべて」
  • エピローグ
  • 参考文献
  • あとがき

★ 感想

ライトノベルと呼ばれる分類になるのでしょうか。でも、古書をテーマにしたこのシリーズは知識欲もくすぐられ、楽しく読めるシリーズでした。結局、シリーズ七冊を全部読んでしまいました。

今回のテーマはシェークスピアの稀覯本。なかなか難しいテーマですね。私も含め、ほとんど知らない人ばかりでしょうから、説明をしながらミステリーのネタ提供をしなきゃいけない。しかも、八つ折りだの活字印刷(活字拾い)だの、挿絵や図解が欲しいくらいの内容が出てくるので、その説明も大変。でも、アニメ映画「銀河鉄道の夜」のシーンを引き合いに出すなど、(これも知っている人にとっては、だけど)分かり易くイメージさせてくれた。

著者も古書の専門家という訳ではない。巻末の参考文献一覧には四、五十冊の署名が並んでいるが、それくらい調査をしないとこの小説は書けなかったのだろう。作家も大変な商売だ。でも、お蔭でほとんど知らなかったシェークスピアの世界や、当時の書籍の制作事情などを知ることができ、こちらも満足。活版印刷(活字を拾って並べ、紙を押しつけて印刷する方法)って大変だったんだとか、そのせいで(お蔭で?)一冊ずつ“個性”とも言うべき異なった印刷ミスがある、そしてそれが稀覯本の価値をさらに上げているなんて、なんとも魅力的な世界だ。金持ちにしかできないだろうけど、稀覯本収集家が夢中になるのも分かる気がする。

ただ、そんな謎解きの仕掛けに力を入れた分、人物設定は少々乱暴かも。ミステリーの犯人は多少エキセントリックな方が魅力的だが、悪役の「久我山尚大」や、栞子の母親「篠川智恵子」は人物設定に現実感がないかも。さらには過去の六冊の途中でのネタ作りのため、巻頭にこれは図が挿入されているのだが、登場人物の家系図が金田一耕助の事件並みに複雑になっている。これも、あれ?これは誰だっけ?となってしまい、話に入り込むのにちょっと邪魔になったかな。

と、多少の注文はありつつも、楽しく、興味深い話が一杯のシリーズだった。ドラマ(篠川栞子役は剛力彩芽、五浦大輔役はEXILEのAKIRA)にもなったし、映画化(篠川栞子役は黒木華、五浦大輔役は野村周平)もされたようなので、“観る前に読む”のが良いんじゃないかと思います。

★ ここから買えます


コメント