鳥山石燕 画図百鬼夜行

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★あらすじ

鳥山石燕(とりやま せきえん)はかなり裕福な暮らしを送っていた。そして四十歳を過ぎてから絵に没頭し始め、狩野派の絵師となった。とは言え、描くものは妖怪など。生活のためではなく、自分自身の“趣味”の世界として絵画であり、妖怪画だったようだ。
鳥山石燕は古典への造詣が深く、そこから題材をとって妖怪たちを自ら生み出し、描いていく。

画図百鬼夜行

木魅(こだま) 百年の樹には神が宿っていて、形となって現れる。

黒塚(くろづか) 奥州安達原にいる鬼。古い歌にも歌われている。

濡れ女、ぬらりひょん、ぬっぺらぽう、牛鬼などを描く。

今昔画図続百鬼

逢魔時(おうまがとき) 黄昏時のこと。百匹の魑魅魍魎が現れる。王莽時(おうもがとき)とも書くが、これは王莽が前漢と後漢の時代の間に短期間の王朝を起こしたことに拠る。

酒呑童子(しゅてんどうじ) 大江山で野盗を働いていた鬼。

陰摩羅鬼(おんもらき) 蔵経の中で屍が変じて陰摩羅鬼になる。鶴のような形だが色は黒い。羽根を震わせ、大きな声で鳴く。

今昔百鬼拾遺

蜃気楼(しんきろう) 蜃とは大蛤のこと。海上に気を吹き上げ、建物の形を作り上げる。海市(かいし)とも言う。

蓑火(みのび) 田舎道で見る火の多くは狐火である。蓑から火が出ているのは陰中の陽気か、もしくは耕作に苦しむ百票の臑の火かもしれない。

目目連(もくもくれん) 廃墟に多くの目があるのは、碁打ちが住んでいた跡かもしれない。

百器徒然袋

ばけの皮衣(ばけのかわごろも) 三千年生きた狐はモグサを被って美女に変身する。

鞍野郎、鐙口(あぶみくち)、袋狢(ふくろむじな)、三味長老、箒神(ははきがみ)などは、古道具が化けたもの。

★基本データ&目次

作者鳥山石燕
発行元KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
発行年2005
ISBN9784044051013
  • 画図百鬼夜行
  • 今昔画図続百鬼
  • 今昔百鬼拾遺
  • 百器徒然袋
  • 解説 多田克己
  • 索引

★ 感想

いわゆる「百鬼夜行絵巻」は、古くは室町時代から描かれ始め、明治・大正時代にまで続くテーマだったそうだ。鳥山石燕さんは江戸中期の人。過去の絵巻は当然知っていただろうけど、彼はさらにそれ以上に新たな“もののけ”を生み出していったようだ。今ではお馴染みとなった妖怪(ぬらりひょん、目目連など)を初め、中国の古典や山海経(せんがいきょう)などに描かれた神獣・悪鬼、そしてたぶん彼による創作の魑魅魍魎たちを、妖怪百科事典のように描き出している。

狩野派の絵師であったそうだから、画力は確か。そんな彼の描く妖怪たちは、恐ろしさと言うよりは哀れさを纏っているものや、逆に滑稽な奴もいて、飽きさせない。網剪(あみきり)は、テナガエビのような姿で、確かにこのハサミで網を切るんだろうけど、なんか憎めない。生霊は人の手紙を盗み読みしているのだろうか。
泥田坊は、懸命に田畑を耕して一生を終えた翁の変わり果てた姿。翁の死後、子どもたちは酒に溺れて田畑を人に売り渡してしまったそうだ。そのため、翁の霊が一つ目の泥田坊となって「田を返せ」と叫びながら、夜な夜な歩き回るのだとか。なんとも哀れ。

鳥山石燕の描く絵自体に添書(説明文)が書かれているものが多い。草書で書かれたそれらを、本書では文字に起こしてくれている。ただし、現代語に訳してくれてはいないので、難解。内容自体も、石燕の博識のために、古今東西の書籍から引用されたらしいものが多いので、さらに難解さを増している。残念ながら、本性はその辺りの説明も特にされていない。
まあ、巻末の解説にもあるように、余り難しいことは考えずに、“絵本”的な感覚で妖怪たちの姿を楽しむのがいいのだろう。あの水木しげるも石燕の作品にインスパイアされて妖怪たちを描いたそうだから、ゲゲゲの鬼太郎のルーツだと思って眺めていくのが良さそうだ。

これからも、妖怪の話を見聞きするたびに、百科事典のようにこの本を使っていけそう。名前だけでは分からない姿を知ることができるのだから。

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