京都を学ぶ【洛東編】

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★あらすじ

本書は、京都の文化資源を深掘りしていこうというシリーズの五巻目。地域ごとに分けて論じられてあり、鴨川やその東岸、そして山科辺りの“洛東”が本書の範囲。

平安時代の鴨川は、位置としては今と同じ辺りを流れていたが、川筋は広い河原に幾筋にも分かれていた「網状流」と呼ばれる状態だった。砂礫質の扇状地であったため、糺ノ森より上流では地下を流れ、現在の加茂川・高野川合流地点辺りで地表に姿を表していた。そんな鴨川には九世紀ごろに「唐橋」が既に架けられていて平安京の東の出入り口となっていた。
鎌倉時代になると、勧進(人々からの寄付金)によって四条橋、五条橋が架けられる。ただ、五条橋は現在の松原橋の位置にあった。後に、豊臣秀吉が方広寺造営にあたって五条橋を今の位置に移したとされる。四条橋は江戸時代まで網状流を越えるために、中洲を中継した二本の連続した橋から成っていた。

明治期、琵琶湖疎水が整備され、水力発電所も建設された。産業振興に大いに役立った疎水だが、南禅寺門前一帯では邸宅の造園に利用され、新たな高級住宅地(別荘地)の開発にも利用された。現在は旧山縣有朋邸「無鄰菴(むりんあん)」だけが一般公開されている。
疎水開発にあたって予定地の周囲も資材置き場などのために広範囲に買収、確保された。完成後、そのような土地が払い下げられたのだ。その多くは山縣有朋と政治的に関係のあった大阪府知事や京都府収税長などだ。それら邸宅では疎水の流れを引き込み、小川や池が造られていた。現在はそのほとんどが姿を消してしまったが、かつては邸宅街の様相を見せていたのだ。

★基本データ&目次

編者京都学研究会
発行元ナカニシヤ出版
発行年2021
副題文化資源を発掘する
ISBN9784779515736
  • はじめに
  • 洛東概略図
  • I 洛中と洛東を結ぶ橋
  • コラム1 五条の橋の形 (中西大輔)
  • II 東山の山荘と寺院
  • III 山科の寺院
  • コラム2 安祥寺の創建と恵運の入唐 (吉岡直人)
  • IV 東山の近代
  • コラム3 京焼・清水焼と登り窯 (木立雅朗)
  • コラム4 清水寺の明治維新 (杉本弘幸)
  • あとがき

★ 感想

現在、五条大橋の西詰に「牛若丸弁慶像」があるが、彼らが出会っただろう平安時代末期の五条橋は場所が違っていたそうだ。そして、当時の五条橋にあたる現在の松原橋のたもとには「昔はここが五条橋だった」という案内板が立っているようだ。本書で紹介されている歴史を知っていれば、どちらの史跡もさらに楽しめそうだ。
現在は当時の姿を全く留めていないような場所でも、「かつてはここにXXXXがあった」と知っているだけで、その景色は全く異なって見えてくる。あらたな文化資源を見いだすのが本書・本シリーズの狙いだとすると、まさにその通りになりそう。ただ、現在も残っているものや歴史上有名なものは今さら語る必要がない。そのため、本書で対象となっているのはかなりマニアックというか、知る人ぞ知るものばかり。地元としてはこれから盛り上げていこうと言うことになるのでしょうが、本書を読んで先に知ることができたのだから、人に自慢したくなりますね。

清水焼の登り窯の話も出てくるのですが、戦争中(第二次世界大戦)に火除地にするため現在の五条通(国道一号線)の周りの家屋が取り壊しされ、多くの窯元もその犠牲になったそうです。さらに残った窯も戦後になると煙害の元凶として廃業に追い込まれてしまったとのこと。そして今はほんの一部が遺構として残るだけ。消えていってしまったものの歴史は、このように書物などで残してもらわないと全く分からない。

それにしてもさすがは千年の都・京都。本書でも知られていない話がいっぱいなのに、シリーズものとして各地域のネタがまだまだあるのだから。本シリーズを読破して、次回の京都旅行に備えたいものです。

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